SPECIAL

2013.10.11

時は2113年、新日本国の第2代目大統領である大空翔子。100日後に控えた大統領選挙の前に、演説のテクニックを学ぶべく、とある事務所を訪ねた。

翔子を迎えたのは、鳥肌翼賛会に所属する鳥肌実。 時局講演会で全国をまわる演説のプロフェッショナルでありながら、公然猥褻・銃刀法違反により前科2犯というキワモノである。 果たして翔子は無事に帰路につくことができるのか。
鳥肌と翔子、いざ対面——。

大空「お初にお目にかかります。新日本国第2代目大統領の大空翔子と申します」
鳥肌「鳥肌実です。ようこそおいでくださいました」
大空「今日は鳥肌さんに演説のコツをご教授いただきたいと思って参りました」
鳥肌「演説とはレゲエミュージックにも通ずるところがありまして。一言で言いますと“魂の叫び”なんです」
大空「“魂の叫び”ですか」
鳥肌「上手下手というよりは、本当に魂が入っていることがポイントなんです。ですから、訴えたいことがいかにストレートに相手のハートに……」

鳥肌バンッッ!
鳥肌「と、突き刺さるかが、演説の肝だと思います。これを演技やパフォーマンスでやってしまうと、非常に薄っぺらく通り一辺倒でマニュアルどおり、右から左に流れてしまうようなものになります。つまり、訴えたいことやメッセージのない、演説家になってしまうんですね」
大空「そんな演説では、民衆の心に刺さりませんよね。勉強になります」
鳥肌実は、私は訴えたいことはないし、メッセージはないんですけどね
大空「えっ!?」
鳥肌「そういう意味では、演説家としては失格です。私は目立ちたいだけで何のポリシーもなく、“ただ目立ちたい”という一心でここまでやってきたんです。だから聴衆からバカにされ、罵倒されて、罵声を浴びせられましたね」
大空「そ、そうだったんですか……。罵倒というと、例えばどんな言葉でしょうか?」

〜鳥肌実、聴衆の言葉を演技〜
帰れ!エセ右翼
つまんねえんだよ!刈り上げ

大空「な、なんと……。みなさんお怒りになられてしまうのですね」
鳥肌「はい。だいたい私が街頭で演説をすると、怒りを買うわけです。私のように最初から最後までうわべだけの国粋主義を押し出すと、すぐに聴衆や聞き手、相手にみすかされてしまう。つまり偽りの意志や決意を全面に押し出し、流暢にしゃべったり、立て板に水のごとく何かをベラベラ並べ連ねたりしても、相手の心には突き刺さらない」
大空「うわぁぁ……」
鳥肌「だから私が街頭に立つと即座に」

〜鳥肌実、聴衆の言葉を演技〜
調子に乗るな!エセ右翼

鳥肌「という、罵倒や罵声がすさまじく、吹き荒れるわけです」
大空「罵倒や罵声を浴びせられると、心が折れそうになりませんか?」
鳥肌「確かにそのとおりですが、私の場合はそこからがミソというか、本番なんです。罵倒され、全否定されてから一気に巻き返すっていう」
大空「なるほど、鳥肌さんのテクニックのひとつなんですね!」

大空「鳥肌さん流のオリジナリティってどのように確立していったんですか?」
鳥肌「メッセージのない演説家としてデビューして、一体何だったのかなと考えましたね。そして、そもそも私のコンセプトが何だったのかなということに行き着きまして。先ほども言いました通り、ただ目立ちたかったんです。そこに何があるのかと言えば、何もないんです。ということは、見ている人からすると、結局何をしたいのか分からない人なんです。これこそが私のコンセプトだと思ったんですね」
大空「鳥肌さんの方向性と言いますか、基本的な概念ですね」
鳥肌「何がしたいのか分からない。これ以上マヌケなことはないんじゃないでしょうか。これこそがスペシャルにキ●ガイじみている。まさに私のよく言う言葉ですが、“無為こそ過激”です。これが一番大切な事であると思って、今日まで結局何がしたいのか分からない、という一切落としどころのない迷宮に陥っているんですよ」
大空「何もしないことが強さを生み出すこともありますよね。たとえば、仁王立ちという言葉があるように、立っているだけで行く手をふざぐわけですよね」
鳥肌「話が混沌としてきましたけど、翔子さんが演説をするときに心がけていただきたいのは、まずは相手のハートに突き刺さる訴えたいことをビシッと言い放つこと。そこに上手なしゃべり、流暢なしゃべりは無用です。しかしですね……、その訴えたいことは、最終的にたいして訴えたいことじゃないと思うんです」
大空「最初に訴えたことは、真に訴えたいことではない、と?」
鳥肌「そうです。そのときにちゃぶ台をひっくり返して、どこまで開き直れるか、がポイントです」
大空「深いですね(聞き入る)」
鳥肌「ちょっと難しいことを言っていますが、初心者コースとしては自分の信念をぽんとぶつけて演説してください。そして最後に、今までしゃべってきたことをすべてくつがえすのです」

〜鳥肌実、演説のシメを実演中〜
みなさん!
今まで申し上げてきたことはすべて撤回します!
おまえらのために言ってやっただけなんだ!
おまえらはクソなんだ!

大空「ええっ。そこまで罵倒してしまって良いのでしょうか……。そして最後は……?」
鳥肌そしてその場を立ち去る、だけです」
大空「か、かなり過激ですね」
鳥肌「そうすることで、聴衆から翔子さんに対する憤りがグワッときますから。それがあなたに対する“ひきつけ”ですね。要するに怒りを買うということで人をひきつける、この鳥肌イズムをぜひとも継承していただきたいです」
大空「な、なるほど……。あとあと大変そうですね。」
鳥肌「私はひたすら誰かを怒らせていたいし、私自身が怒られたいんです。つまり無視されたくないんですね、注目されたいわけです。ですから得体の知れない演説になってしまうんですけどね」
大空「でも演説をするには、訴えたいことが必要ですよね」
鳥肌「そうです。お国にのためにといったような強い志であったり、何かに対しての怒りであったりとか、強い核となる訴えたいことが必要ですね」

大空翔子は鳥肌イズムを取り入れた演説のコツを理解したようだ。ただ、言葉だけではまだまだ足りない。大統領選挙はそんなに甘くないことを、そして強力なライバルがいることを分かっている大空翔子は、さらに聴衆をひきつけるために必要な要素を追求していく。

大空「鳥肌さんは演説をされる際に、聴衆をひきつけるポーズを意識されていますよね?」
鳥肌「はい。もちろん重要です。(センスを取り出しながら)指先が大事でして、通常ではあり得ない複雑な指先を表現します」

大空「たしかに、つい見入ってしまうポーズですね」
鳥肌「一番ベタなポーズは避けてください。人の目をひきつけるにはあり得ないポーズをするほうが効果的です。こっちを向いた人に『この人はちょっとヤバイんじゃないか』とか思わせないといけないですね。決してベタな動きにならないように、ちょっと陶酔しきったような動きをするんです。できれば白目をむいていただいて…」

大空「ちょ、ちょっと怖いですが……!」
鳥肌「でもこうすると、『この人大丈夫かな』って思いませんか?」
大空「そ、そうですね、気になります」
鳥肌「これでギュッと視線が集中されるんです。誰でもがやっているようなかっこいいポーズでは、全然注目されませんからね。もしよかったらちょっとやってみてください」
大空「はい!やってみます!」

鳥肌「指を複雑にしてください」
大空「わっ、あああ。なんだか圧倒されます……」
鳥肌「決して規則正しくしない。足もちょっとよじったほうがいいです」

〜鳥肌実の暴走をお楽しみください〜

大空「これはバランスを取るのが、結構大変で……」
鳥肌「簡単ですよ!」

大空「きゃーーーー!や、やめてください!」

大空「足ツボがぁぁぁ!だめぇぇぇぇ!」
鳥肌「はい、足ツボマッサージをやりました」
大空「け、健康も取り入れているんですね。ああ、発汗作用がすごいです」

思わぬところで鳥肌実が暴走したが、鳥肌実直伝のポーズを教わった大空翔子。こういった予測不能な事態に対応することも大統領の務めである。そして、もともと準備していた大統領演説の原稿を、鳥肌実に添削してもらうことにする。

大空「大統領選挙に向けて、今から原稿の準備をしているんです。本日、その原稿を持ってきましたので、鳥肌さんにチェックしていただきたいんです」
鳥肌「わかりました」

〜翔子・演説読み上げ〜

鳥肌「はい。非常にいいですよね」
大空「好感触ですね。どのへんですか?」
鳥肌「一切の妥協を許さぬ完全なる独立国家として、自国を守ろうというお考えですよね。私の考えとしては……『大日本帝國万歳!』なわけですから、翔子さんのお考えには共感できますよね」
大空「ん、んん……?あ、ありがとうございます」
鳥肌「独自の強い軍事力を保有する大日本帝國の復活を目指すためにも、翔子さんのように若い方がこういったお考えをお持ちなのは、非常によいことですよね。若者たちに対して、真剣に政治について考える機会を与えるかもしれませんし」
大空「少し、いや、かなり誤解されていらっしゃるようですね……」

ここで大空翔子内閣の美少女閣僚たちを紹介し、鳥肌実の好みを調査する。 これは政治的策謀ではないが……、鳥肌実の身辺調査とも思える。翔子は最後に何かを企てているかもしれない。

大空「大空翔子内閣は全員女子高生なんですよ。鳥肌さんのパートナーとするならば、この中から誰を選びますか?」

〜大統領・大空翔子、法務大臣・弓波千流子、官房長官・桜木芳乃、総務大臣・環小神子、防衛大臣・明星かぐや、外務大臣・不破聖、科学技術庁長官・安之雲ミブリを見せる〜

鳥肌「私は迷わず、環さんですかね。もちろん翔子さんも悪くはないんですけど」


環小神子(総務大臣)

大空「やはり日本の和の心を大切にする鳥肌さんは、大和撫子系がお好みなんですね」
鳥肌「かぐやさんは、防衛大臣っていうわりにはちょっと可愛すぎる感じがしますね。でも衣装がとてもいいですね」
大空「衣装ですか。それはどのへんでしょう?」
鳥肌「黒、赤、白の色を取り入れていますね。これはナ●スカラーじゃないですか」


明星かぐや(防衛大臣)

大空「……。かぐや本人も、デザイナーもまったく意識してないと思いますが……。」
鳥肌「はい。よく心得られてますね。彼女の衣装はいいんですけど、お顔立ちや雰囲気は環さんが一番タイプですね。もちろん、刀をさげているところもポイントですよね」
大空「次点はかぐやですか?」
鳥肌「いえ、桜木さんです。ショートカットのこの感じで……脱いだらすごかったりする、みたいな気がします」


桜木芳乃(官房長官)

大空「………………。と、殿方には重要な視点ですね」
鳥肌「こういったギャップは男としては興奮するでしょうねぇ」

そして、大空翔子大統領から驚愕の問いかけが……。

大空鳥肌さん、大統領選挙に立候補する気はございませんか?
鳥肌「いやあ、ぜひとも立候補したいです」
大空「それはうれしいです!ぜひ挑戦していただきたいです」
鳥肌「はい。立候補して落ちたいですねえ」
大空「ええっ!?」
鳥肌「翔子さんの対抗馬として出馬して、無惨で悲惨な落ち方をしたいです。わけのわからない演説をして、無惨にも罵声をあびせられ罵倒され、落選したいです」
大空「もしかして鳥肌さんは……」
鳥肌「はい、完全にドMですね」

〜最後に鳥肌氏とツーショットで記念撮影〜


鳥肌 実(とりはだ みのる)
樺太出身。42歳(万年厄年)。2013年11月21日より全国時局講演会「右翼バカ一代」が群馬club FLEEZよりスタート。全国17都市全21公演が開催予定。詳しくはオフィシャルサイト(http://www.torihada.com)をチェック。

ルイズ・スフォルツア(アフィリア・サーガ)
12月19日生まれ。O型。全国展開中のカフェ&レストラン「アフィリアグループ」の店舗から選出された11人組のボーカルユニット「アフィリア・サーガ」に所属。Twitterは@louise_sforzur
アフィリア・サーガ公式HP:http://afiliasaga.jp/